68:湖沼(墓)

mimic-yk2008-03-24

 光を反射する雲を追って湖のほとりに来てしまった。
 雲は消散し、心臓の辺りを押さえて、湖面を見詰めている人が居る。
 瞳が澄んでいて、顔面が蒼白だ。
 「貧血…?大丈夫ですか」
 「悪魔だから心臓が痛いのです」
 「…人間に見えてますよ」
 遊覧船に乗りにいく、というのでついていった。
 小銭を払い、風に当たる。風が楽しい。
 目線は遠くの船、白い鳥を届かない手紙のように思い、岸辺にまどろむ。
 「心臓はー?」 「もう治った」
 だがその人は若干不機嫌なのだった。
 「この湖の涙腺が弱いのは、底に死体が埋まっているからです。死体は湧きつづける地下水のフィルターになっています。ここは私の…墓なのです。」
 「…人が埋まっているんですか?」
 「片目が潰れてしまったんです。この湖は…左目の方だと思います。埋め立てられた右目は高層ビル街の明かりになっているよ」
 「ふぅん。ビルの方は盲目なんですか」
 「そう」
 この人が求めているのは、自然から取り出せるもの、あるいは取り出すと死んでしまう、というようなものなのではないか、と思った。
 (夢日記,はてな夢日記)