64:女子寮
3月?
女子寮に入っているMはベッドに寝転び肘枕をつく。
静まり返った部屋で水分が凝結しつつある音(雨の音)を聞こうとしている。
灰色のトーンを帯びた窓からの景色や、並木をざわつかせるゴー…という突風。
暗雲が立ち込めた空に、半透明のレジ袋が舞い上がった。
寮は若干きしんでいるようだ。
スプリングの効いたベッドの上で、Mは寝返りを打つ。
「ギー…。」
しばらくして、パラパラ、という雨音が聞こえ始めた。
あー!これからミーティングかぁ(-_-)///
部屋にストックしてある好物の<保存の効くお菓子・各種>を箱から出し、ベッドの上に適当に並べていると、Rが部屋にやってきた。
掃除の当番決めの話し合いをするが、もっと下らない、あるいは真剣な話をしたいとMは思っている。
Rは窓を開け、お酒と野菜を買ってきたところのUの名を呼んだ。
顔に掛かる髪に眉をしかめながらUは手を振る。
「U、ギリギリセーフだね。」
「そうだね。そろそろ本降りじゃない?」
外は嵐になりつつある。
Rは窓際でタバコに火を点け、窓枠で灰を払う。
「R、灰皿使おうよ。」
「はーい。…私、灰皿忘れちゃうんだよね。私、タバコやめようかなぁ…。」
Mは困り顔だ。
雨が本降りになってきた。
Rは窓を閉め、つまらなそうに携帯灰皿で火を消した。
Mは何となく、Rのことが好きになった。
バタバタッと階段を駆け上がる音がして、<お酒・各種>を持ったUがドアを開けた。
「濡れたぁ。」雨粒を払うU。
「飲みながら決めようよ。」
「野菜も食べたいなぁ。」
「U、野菜切ってこない?」
「え、またぁ。」
共同のキッチンは1階で、Mの部屋からは遠い。
「野菜なんていいじゃん。」
Rは野菜を切りたくなっていたが、面倒くさくなった。