31:涙
家族で料亭に出掛けた。
食事が部屋に運ばれてくるが、1人分足りない。
誰か1人の分だけが、庭にある石のテーブルに運ばれた。
そして小雨が降り出した。
父が、「神様が悲しんで泣いている、何か、良くないことが起こる」と解釈した。
食事が雨でだめにならないよう、家族で屋内に運び込み、差別無く食べる。
(だが、外に出されていた食事は私の分の様なのだった)
フレンチなのに御ひつに入った赤飯、ご飯付きの食事だった。
食事の後、私達家族は空港へ移動した。飛行機に乗って帰るらしい。
「やぁ、久し振り!」
あれー?この人誰だったっけ。
会ったことはあるのに覚えていない。
彼の顔を見ているうちに、私は彼が好きになり、話しているうちに、彼の半分、いや、4分の1が、人間的でないもの、私の持っていないものに思えた。
自然、動物的なもの、神様、悪魔か?
どうせ彼は私より優秀で寛大なのだ…と思っていると、彼は、これから空港で予防接種がある、ということを告げ、どこかへ行ってしまった。
それから、自分の名前入りの、予防接種のカードが配られた。
抗体の種類がDNAの型のように、1人ひとり違うらしかった。
飛行機に乗る。
洗面所に行って水道をひねったら、豆粒ほどの大きさの、双子が出てきた。
これは何だ?胎児なのだろうか。後から出てきた妹らしい方が、傷付いていた。
厨房に行って栄養のある水を貰い、ビーカーに入れる。
少し大きくなったようだが、もう死んでるのかもしれなかった。
人間?いや、まだ生まれてない。出来掛けじゃないか。何故水道から出てくる…?
父が言っていた、「良くないこと」が起きたらしかった。