追悼・松井康成展 at:信濃美術館

 <練上>という特殊な技法によって、様々な模様で形創られた陶器を、長野まで電車で見に行く。館内には、50代近辺の人が多かった。
 似てはいないのだが、パステル調のトーンが、印象派のそれを彷彿とさせる時があり、器となる過程で生じる模様の歪みが色彩と相まって、ちょっとサイケデリックな感じがする。
 <象裂>、<波璃光>等の技法の、表面の印象は対照的だが、風化していたり、エキゾチックな感じでも、全体的には温かみのある和のイメージだ。晩年の作品が、これでもかというほど磨き上げられていた。(ダイアモンドの粉末で研磨してあるそうだ。)
 VTRがあり、住職で人間国宝である生前の作者が、「元気が出たり、癒されたりする作品を作ることが重要」と、インタヴューに答えていた。
 まったく偉そうなところがなく、作品創りが楽しそうで、当たり前のことを当たり前に喋っている、という印象が、後々まで強烈に残った。なぜ、説得力があるのだろう。作者が住職だからだろうか…。
 私は、Powerや癒しを得たり与えたりすることの容易でなさと、<素>というものの持つ不可抗力性や、テレパシーめいた力に想いをめぐらすのだった。(‘05.12.11)
google:image:松井康成