32:思い出
昔、近所に住んでいたN君が、廃墟化している自宅の様子を見にやって来た。
一度中を見たかったので、見に行く。
N君の家は変わった構造になっていて、道路に面した2階入り口から、半地下の1階へ降りるようになっている。
道路より低い所に建っているのだ。
玄関が封鎖されており、小さな引き戸から中へ潜り込んだ。
家の背後には田園風景が広がり、窓からの眺めが家を広く感じさせる。でも、小さな家だ。
―近所なのにずいぶん違う空間が広がっているなー。
ただし、家は古く、建てつけも悪く、壁もガラスも薄く、物置に近かった。
「これでも昔は大丈夫だったんだけどねー。」
N家は遠くない近所に住んでいるが、借家気分なのだという。
かといって、ここに戻ってきても以前の感じではなく、年を取った、と思うらしかった。
私は、「どこに住んでいても、年を取る速度は同じなのだなー。」と思った。
外へ出る。
N君は、引き戸を固定し、戸口を大きな石で隠した。でないと猫が入ってしまうのだという。
戸が開くと、彼の思い出は逃げていってしまうのだろうか。
N君は、まだこの家に未練があるようだった。
(夢日記,はてな夢日記)