こころ/夏目漱石:(新潮文庫)
独断と偏見による読書記録。
夜中にコーヒーを飲んだら内蔵が痛くなり、起き上がれないので一日中読んでいた日の日記。…に後からも少々加筆。
再読。高校生のとき読書感想文用に買ったのが、出し入れのない本棚でひっそりと黄ばんでいた。 当時は漠然と、「分かり易い文章」「先生の文章」だと思っていた。(感想文は、何を書いたらいいのか分らなくなり挫折したような気がする。)
□連想
内容はともかく、今回は、当時より文体に親しみを覚え、<道端の草が思い付いたように風に揺れ、音も無く桜が散り始めている>ような感じがしてしまった。
その間にも何かが生まれ、死んでゆくのが日常なのだが、「先生」の時間は、「k」の死や両親の不在、親族との断絶、働いていないこと、等で、ある意味止まってしまっている。
□印象的なセリフ
「金さ君。金を見ると、どんな君子でも悪人になるのさ」「私は今自分で自分の心臓を破って、その血をあなたの顔に浴びせかけようとしているのです。」「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」(kのセリフ)等、全部先生のセリフ。…抜き出すと大いに内容が損なわれるなぁ。
□色に関する記述
<もう取り返しが付かないという黒い光が、私の未来を貫いて、一瞬間に私の前に横たわる全生涯を物凄く照らしました。> kの死に直面してしまった先生の心象風景。
その他:後に記入(色々見付かった)
□感想
モヤッとした死(生きにくさ、孤独、断絶感)のイメージに覆われ読後感は最悪。それなのに、kも先生も<私>っぽい、というか…。(やはり私は夢十夜の様なお話の方が好きなのだ。)
どうやらこの小説、エゴイズムのお話のようなのですが…。(おじさんの存在、とかもそんな感じだったな)
初出の大正3年当時、人々にどう読まれたかが気になるところか…。
可哀想なのは、あまり内面の描かれない奥さんなのか。
死が近い病人の日常等、上手に描かれていると思う。
□そういえば
今から10年位前、やはり死期のせまった埴谷雄高という人が、ETV特集(NHK教育)で、「夏目漱石が描いているのは社会の中の人間存在で、僕からいえば一段下の文学だ!」みたいなことを言い放っていた。(と思う)
その時、僕=自分、という意味ではなく、作家が(僕)というある種普遍的な概念(視点or感覚)を喋っていた様な気がしたけれど、記憶は定かではない。(途中から見たし)…10年前かー。この世にも冥界にも色々な人がいると思いたい。
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/03
- メディア: 文庫
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